こんにちは。西性寺の天﨑仁紹です。この度も西性寺ホームページをご覧くださり、誠にありがとうございます。
さて、ここ数年の西性寺は工事の音で包まれています。というのも、2022年の初頭から七月頃にかけて、お寺の北隣にある住宅の建て替え工事が行われ、それが終わるかと思えば今度はお寺の向かいにあった大学生の寮の取り壊しとマンションの建設工事が相次いでいるからです。現在はマンションの建設工事も随分と進み、真新しい建物が垣間見えるようになりました。とはいえ、もう少し工事の音を聞くことになりそうです。
当然ですが、長く使用された建物は朽ち、いずれはその役目を終えます。そして取り壊しを経て新たな建物が建ちます。あらゆる物事は常に変化し続けていることを仏教では「諸行無常」と教えていただきますよね。
しかし、こんなにも当たり前のことをなぜ仏さまは改めて教えてくださっているのでしょうか?それは、変化には何かしらの苦しみが伴うからではないかと思います。
昨今はお寺の周辺のみならず、神戸や大阪など、あちらこちらで「再開発」と呼ばれる建て替えが行われています。そして、そのお知らせは大抵ポジティブなものとして伝えられ、誰かが苦しんでいる姿は排除されていることが多いのではないでしょうか。
再開発で便利になった、住みやすくなったという声は多く聞こえます。しかし、そこには長く親しんだ建物に別れを告げざるを得ない人、数年は建て替え工事での騒音を耐えなければならない人も居ます。華やかに伝えられる再開発の裏にある苦しみに気付かされた瞬間でもありました。
そして、自身の苦しみに向き合う時、私たちはどうしても他者の視点を見失ってしまいがちです。心の余裕がなくなるとその人の本性が現れると言いますが、まさに私たちが抱える自己中心的な心が現れる瞬間ではないでしょうか。
日々お勤めしている正信念仏偈の末尾では「道俗時衆共同心 唯可信斯高僧説」という言葉をもって締めくくられています。これは、この世の中で生きる人はみな共に、先人の方々が伝えてくださった仏教を信じるべし、という親鸞聖人からのメッセージです。その言葉の裏には、どんな立場であれ何かしらの苦しみに向き合う人々の姿があるのでしょう。
「他の人も苦しんでいる」は他人から言われると余計に苦しいもの。だからこそ、自分自身が他者の苦しみにも進んで気付くことのできる姿を目指したいですね。
トップ写真について
トップの写真は、2021年10月ごろの西性寺周辺の様子です(この画角ですと見えませんが、マンションと3階建ての間に本堂があります。)向かいも工事、隣も工事、そして前の道路も工事と、この日は工事三昧(?)の1日でした。